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朝比奈隆生誕100周年記念特別演奏会。

100年前の7月9日、日本クラシック界の発展に貢献した朝比奈隆さんが生まれた日である。
その日から100年後、先生が終身率いた大阪フィルの特別演奏会が開催された。

当日は決算業務を完了し、首尾良く定時で退社し大阪へ向かう予定であった。
そうすれば何とか開演時間に間に合う…非常にタイトな計画でもあった。

タイトな計画は、時として脆く崩れ去る。
あと1歩で悠々間に合うはずだった決算伝票の土台を揺るがす数字の修正を、定時30分前に求められた。
もはや開演には間に合わない。そういう資料を作ってしまった自分に対する苛立ちが時の流れを速めるような気さえする。
何とか修正を終えシステムにも入力し伝票も修正し、ひとまず決算作業として最低限必要な落としまいはつける事が出来た。

時間は18時30分を回っていた。
出発予定時刻から1時間を経過。しかしまだ諦めるわけにはゆかない
DVDで感銘を受けた朝比奈先生最後の定期演奏会の面影が、今日大植音楽監督の下で再現されるはずなのだから。
「前座」のモーツァルトピアノ協奏曲第23番は諦めざるを得ないが、ひとまず大阪へ向う。そもそもモーツァルトピアノ協奏曲の後期8曲のうち、23番は何が何でも聴きたい1曲ではない。今日ばかりはブル9を聴く事に意味がある

明石でJRに乗換。最初は15分後の新快速に乗り換えるつもりだったが、2分で前の新快速に乗り換えられるであろう事を直通特急の車内で気が付き、明石に到着するや否や一目散にJR明石駅列車線ホームを目指す。
息絶え絶えになりつつも何とか新快速に間に合い、シンフォニーホール到着予定時刻が19時35分頃と予想。モーツァルトピアノ協奏曲第23番は概ね30分余りの演奏時間だから、休憩を挟めば充分ブルックナーに間に合う。勝機が見えてきた

19時28分、定時で新快速は大阪に到着。
一目散に北口のタクシー乗場を目指し駆け足。客待ち中のタクシーを見つけ一安心。
基本料金にも関わらず丁寧な運転と応対を心がける運転士に感謝しつつシンフォニーホールに入る。
ちょうどモーツァルトが終わりアンコールを受けている最中。間もなく休憩時間に入る絶妙なタイミング!天は我に味方せり!

階段を上がっていると休憩に入り多くの聴衆がロビーへと流れている。
私もその流れに乗り、喫茶コーナーで白ワインを求める。
グラスを傾けながらエントランスの並木を照らす光を眺めていると、ブル9を聴くほろ酔い心地になる。

1階席に腰掛け一息つくと、チューニングを終えいよいよ監督の登場を待つばかり。
大植監督が登場すると割れんばかりの拍手がホール中に響き渡る。
一瞬の静寂の後、原始霧が客席に漂い、第1楽章が静かに始まる。
味わい深いブルックナーの名演を多く残した朝比奈先生の魂が乗り移ったのか、譜面台に置かれた朝比奈先生の写真を前に渾身の指揮を見せる大植監督に応えるオーケストラも新時代のブルックナー像を高らかに宣言するかの如き名演。
少なくとも今まで随所で耳にした監督のブルックナーに対する評価が良い意味で裏切られた気分。
第2楽章・第3楽章と続いても聴衆と監督の間の心地良い緊張感は続く。
第3楽章のフィナーレが静かにホールに吸い込まれてゆく間、大植監督は譜面台に置かれた朝比奈先生の写真に深々と頭を下げている。それも長い間。
その間フライングブラボーをかます輩がいなかったのは幸運という他ない。

しばらく静寂が続いた後、ようやく拍手に包まれ鳴り止まない。
ブラボーの掛け声もホールの方々から大きく響き渡る。
関西クラシック文化が50年かけて成熟した姿がここにある。
この姿を是非橋下知事(大阪フィル理事)にご覧頂きたい。
補助金打ち切りなどという戯言はきっと撤回されるだろう。
指揮ピットに立つ監督が大きく見える。
朝比奈先生の写真を高らかに掲げつつ誇らしげな監督のカリスマ性がますます高まってきた証拠。
3度目のアンコール登場の時には座席を立ち「一般参賀」中の監督の近くの通路まで移動し御尊顔を拝謁
中には幸運にも握手される方もおられ羨ましい限り。

エントランスに戻ると、朝比奈先生がブル9を最初に振った時の手書(!)スコアと最後の定期演奏会でブル9を振った時の楽譜が展示されている。
様々な書き込みに先生の魂が今も宿っているように感じられてならない。

演奏の余韻に浸りつつ大阪駅へと歩く。
18時頃の自らの不甲斐なさに対する憤りは、いつしか遠くへ過ぎ去ったような気分。

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酔いつぶれる…

昨年「酔いつぶれる女性」を書いたが、今年も歴史は繰り返された。

歓送迎会が終わり帰宅途中。
最寄駅(巡回駅=駅員が常駐しない駅)で降りると車掌が運転室へとホームを走っていた。
何事かと思い車掌に事情を伺うと、ホームの端で乗客が居眠りしているという。
後ろを振り返ると、運転士が件の乗客と思しき方を介抱している様子。
このままでは電車が発車出来ない。車内には家路へ急ぐ方もおられる。
ホームの端へ駆け寄り目覚めと酒癖の悪そうな乗客を確認し、運転士から乗客対応を引き継ぐ。
かくして、電車は再び走り始めた。

薄暗いホームの端で、お客さまにいろいろ訊ねてみるが、
「わしの事は放っといてくれ!」
「もう少しここで寝るわ。」
「兄ちゃん、わしの事は構へんから、はよ帰り!」
と仰るばかり。
私もこのまま帰るわけにはいかない。最終電車の時間も迫っている。

ようやく立ち上がったお客さまが3駅ほど手前の駅付近の住所を口にしたため、何とか諭しつつ地下道をくぐり反対側のホーム近くまで辿り着く。
そこでもまだ何か独り言ともつかぬ事を呟いておられたが、おもむろに定期券を取り出し改札を出ようとした。
チラリと券面を拝見すると、この駅が書かれている。御自宅の最寄駅だったようだ。
改札を出て公衆電話で御自宅に連絡を取られている様子を確認していると、電車が到着。
この件で応対するため急行した係員に報告し、事態収束を確認したところでようやく私も家路に就く。

なぜに歓送迎会の日に限ってこのようなお客さま応対が発生するのか、不思議でたまらない。
このような事態が起こり得るから、節度ある飲酒を普段から心がけなければならぬ。

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